iPhoneに思う、文字入力と思考回路
4月からインターネット環境が激変し、iPhone中心+休日に自宅PCまたはネットカフェというスタイルになって一月半が過ぎた。いわゆるネットブックの代わりに、iPhoneがあればWeb browsingもメールも何とでもなると思い立って実践しているところで、ちょいと思うところがあったので書いておく。
使い方の根本的な違い
404 Blog Not Found:「パソコンってやばそうだよね」がやばい唯一の理由
なぜ、「パソコンってやばそうだよね」という人はやばいのか。
その唯一の理由は、ケータイやネットブックは「ブラウザ」や「ビューワー」や「コミュニケイター」にはなっても「エディター」や「ビルダー」には慣れないから。
さらに短くまとめると、ケータイやネットブックは、「使えても」「作れない」から。
(中略)
iPhoneのアプリもまた、iPhoneだけでは作れない。そしてそれは決してiPhoneが非力だからではない。iPhoneはかつて私が愛用していた PowerBook 2400 よりはずっと高性能な上、GPSのように MacBook にすらついていない機能すら持っている。問題は性能ではない。iPhoneがあくまで「使う」を徹底していることにあるのだ。そしてそれは、「作る」を放棄していることの裏返しでもある。
iPhone購入時、小飼氏が"リナザウ"ことLinux Zaurusに「小さなコンピュータ」を求めていたのと同じように、僕もiPhoneに「手のひらのMac」を期待した。が、使い始めて間もなく、それは打ち砕かれた。iPhoneはケータイでもMacでもないのだ。iPhoneはiPhoneという新しいジャンルの端末だったのだ。
スペックとしては、iPhoneはそんなに非力なものではないし、むしろ強力なエンジンを積んでいると評価できる。けれど、そもそも使い方が違う。iPhoneは極めるところは極め、そうでないところは割り切るという徹底した設計思想の下で開発されたものだ。
受信はできても発信するには痒いところがある。ちょっと思うことがあっても、文章がある程度の量になろうものならiPhoneの画面では考えがまとまらないのだ。
それは何故か。ひとつはコピー&ペーストができないから、引用するのが困難である、ということもある。今夏発表予定のiPhone OS3.0ではコピー&ペースト機能が付くそうだが、現時点では不可能。それともう一つ、iPhoneに限らず、ケータイやネットブックも含めて言えそうな理由がある。
思考回路に入出力速度が追いつかないとアイデアが膨らまない
携帯端末とPCとでは、文字入力速度と表示範囲において圧倒的な差/超えられない壁がある。
何か思うことがあって、はてなダイアリーに一筆したためる。友達にメールするのとは違い、何百文字という文字を入力する。その入力作業において、入力速度が思考速度(?)に追いつかないと、アイデアが膨らまないのだ。ブラインドタッチ、タッチタイピングは、入力を速くして時間を節約するためだけのスキルではなく、思考の流れを留めないための必須スキルとも言える。
話が逸れるが、大学受験のとき通っていた予備校の先生に「とにかく速く解くこと」を言われた。消しゴムは使わない。ボールペン一本で間違いはササッと×印でも書いて、「思考の流れ」が止まらないよう、一気に解く。その予備校ではセンター試験の数学と物理を20〜30分で解く練習をしていたものだ。
QWERTY配列のフルサイズキーボードでの入力は、間違いなく手書きの入力より速い。iPhoneの日本語文字入力はタッチパネルを利用した画期的なもので、いつの間にか以前使っていたケータイより速く入力できるようになったが、それでもフルサイズキーボードには到底敵わない。
画面への出力に関してもそうだ。小さな画面でせいぜい数行しか見えないのでは、ちょっと前に戻って考えるとか、木から森へ/森から木へと目を移す間に「思考の流れ」がまたしもstopあるいはtripする。全体が見えないから「日記」は書けても「記事」が書きにくい。
処理効率を落とさないためには思考の流れを止めないこと
という、至極あたり前なことは携帯端末論争だけではない。例えばプログラミング。あるいはTeX。
TeXである程度まとまった文章を書いても\sectionや\enumerateなんて打ち込むことで思考の流れを停めてはいけない。そんなことをしているから「TeX一発書き=効率が悪い」と宣う。YaTeXなど使って、極力入力補助を使いこなさないとTeXで文字を打つだけで精一杯になるだろう。
まとまった量の外国語の文章を読むときも、TOEICのReadingの問題に出てくる量の文章で、いちいち文法に気を付けたり分からない単語を分解したり調べたりして、その文章の大意が掴めるだろうか(否、掴めない)。
思考の流れを止めないようにするだけで、普段の仕事ももう少し効率がよくなるはず。膨大な量の書類をチェックするのに、手当たり次第気付いたところからメモするのか、とりあえず付箋を貼付けといてあとで纏めて見返すか。探せば他にもあるハズだ。