鳥人間に言ってはいけない2つのセリフ

怒りはしなくても、イラッ☆とする二言がある。

「あー、あの落ちるやつ?」

かつてあったチャレンジ部門(飛距離よりも発想の奇抜さで審査される)の功罪だと思ってるんだけど、一般の人にとって2時間枠のバラエティ番組かもしれない鳥人間コンテストに出場する人は、みんな本気で空を飛ぼうと思って1年以上かけて作っているのだ。年に1度の大会のために、いやその前の書類選考(これで大多数のチームがふるいにかけられ、出場さえできない)に向けて、チームにもよるけど自分たちの場合は6月から翌年の構想を練り始め、試作機1機と本番機1機を全力で設計・製作・試験・調整している。たとえ結果的に「(プラットホームから)落ちた」と言われても仕方がないくらい不甲斐ない結果しか残せなくても、いくら冗談でも「あの落ちるやつ?」と言われたくない。その一言で、長年の汗が踏み躙られる。

「番組ってまだやってたの?」

確かに2009年は、表向きは世界的な不況により予算がつかず大会が運営できなかったので中止となった。でも出場チームからの熱心な訴えにより、翌年から復活した。でもたった1年やらなかったせいか、はたまたテレビ離れのせいか、鳥人間コンテストの存在は知ってても未だにそれが続いているとは思わなかった人がたまにいる。
もはや鳥人間コンテスト読売テレビの一コンテンツの枠を超え、国内外の飛行機マニアなり専門家なりが注目する大会になっている事実はあまり知られていない。そして残念なことに、読売テレビもそれをよく分かってないのか、「手作りの飛行機を飛ばす」という技術と体力の極限の勝負なのに、やれパイロットの彼女がどうだとか、恩師に捧ぐなんとかとか、理系か文系かでいえば文系の切り口でしか番組が作られていない。そりゃ飽きるわな。本気の技術勝負にまでなっていて、ここ10年くらいで機体の作り方はどんどん進化したし、ペダルを漕ぐだけのコクピットは今や対空速度計やGPS、回転計(rpm)、出力(W)なんかが分かるようになった。そういうところをちゃんと拾って欲しいんだけど、なかなか伝わらない。
だからマンネリ化するんだろうな、とも思う。そして「まだやってたのか」と言われる。その言葉に悪気はなくとも、残念なキブンになるのだ。

あなたの知らないところで、あなたの想像を遥かに凌駕する本気の技術勝負が、しかも会社組織じゃなくて一介の大学生だけのチームで凌ぎを削っているのだ。

彼らは遊びでやってるんじゃないんだよ。