幻の魚・クエを知っているか!?

クエという珍しい魚がある。「九絵」という字をあてるが、その字体によらず不細工な顔、1mを超える巨体。それでも皮ぎしの脂が美味く、身はあっさりとしていて、良い出汁が出る「外見によらず美味い魚」だ。天然のクエは幻の魚とも呼ばれ、キロ単価が高いし1匹あたりの重量もかなりのもんだから、小売店に並ぶことはほとんどない。アブラボウズなど他の魚が「クエ」として偽装されて売られることもよくある話。最近は養殖できるようになったそうだが、やはり天然のクエは貴重な魚なのである。

博多ではクエをアラ(魚ヘンに荒)と呼ぶそうだ。
初期の頃の「美味しんぼ」にもエピソードがある。横綱の激励会に「アラ」が食べたいというリクエストに対し、東西新聞大原社主は骨や端の「アラ」と勘違いしたが、たまたま居合わせた海原雄山山岡士郎に「大原社主は冬の博多には行ったことがないのか? 行ったとしてもろくなものを食べてないようだ」と忠告した、その「アラ」という名前の魚。

で、超高級魚・クエを食いにいった。

へっへっへっ。うまかったぞぉぉぉっぉぉぉぉぉぉおおおおおお(お腹ポンポン叩きながら)(自慢)

うまいもん食った記念に、ここのカテゴリーに「うまいもん雑記」を新しく設けることにした。それくらい美味かった。ということで、うまいもん雑記では店レビューなんぞしてみる。この企画(というかカテゴリー)がどれだけ続くかは分からんけど。

場所

土佐料理 司 茶屋町店(ぐるなび
大阪・梅田の阪急百貨店の北東、ヌー茶屋町のさらに北。梅田芸術劇場の地下1階。司といえば、高知では名の知れた料亭だ。今や大阪と東京に支店をだしたり別名の和食レストランを作ったり勢力を広めている。大阪にも店を出しているらしい、という話はどこかで聞いたが、まさか今日一緒にいった連れからその店の名前が出るとは。

予約と予算

12月23日は祝日。時期が時期だけに、また祝日でもあるし、12月に入って速攻で予約しておいた。6時からで予約していて、15分ほど早く着いたが、これくらいの時間帯だと予約せずともすんなり入れたかも…と思ったら、クエ鍋は基本的に予約制だとか。曰く、偽装品でも養殖物でもない、天然の真クエを仕入れているという。確かに、鍋コースで8800円はかなり敷居が高い。コースにしないクエ鍋で七千いくらだったら、鰹のタタキや先付とデザートがつくコースにしようと、ボーナスも出たことだし奮発した。ちなみに同店の鯨ハリハリ鍋で同等のコースにすると5500円ほど。下衆な言い方だが、鯨よりも値が張る。

店内

大正ロマン風? 落ち着きのある店内。予約して良かったー!と思ったのは、個室に案内されたところ。テーブル席4人掛け個室もどきで、落ち着きのある雰囲気。テーブルや椅子なんかも実家にありそうな感じ。BGMなし。店に入ったのが6時前だったから、静か過ぎる!?とも思ったが、どこに行っても同じようなクリスマスソングよりはむしろBGMなしで、話に華を咲かせるのも悪くない。他、大人数宴会場や和風の個室もあるとか。落ち着きありすぎて、食後はくつろぎモードに入ってしまった。

コース内容

先付: 分葱と??味噌和え。それと胡麻豆腐。
前菜: クエの肝和え。クエの肝と(たぶん)胃袋を刻んだ物を和えて葱を乗せている。酒が進む。
造り: 鰹のタタキ。ニンニクが付いてくるのが高知流かと思われるが、ニオイ少なめのニンニク。明日仕事だからこれくらいでいいか。ポン酢と薬味といっしょに食べる。味は、大阪ならまあこんなもんか(悪いが鰹にはうるさいぞ)。
クエ鍋: いよいよ主菜。ガスコンロでなくてIHだったのは時代の流れを感じる。初めだけ店の人が入れてくれるがあとはご自由に。クエは火を通しすぎない方が良いと思ったが、そんなに煮崩れする身ではないらしい。皮のところの脂身とか骨の周りの脂身がうまい。うますぎるっ。身は白身で淡白な味わい。ある程度煮立ったら日を中火(IHで中というのも変な言い方だが)にするとよいらしい。具材は2〜3サイクルくらいある。
雑炊: 食べ終わってほっこりしてると雑炊の用意をしましょうか、と店員のお姉さんがくる。この席の担当なのか、これを仲居さんと言うのか、同じ人。雑炊お願いします、と告げて、少ししてご飯をもってきた。クエの良いダシが出ているので、味付けは醤油と塩少々。仲居さん薄口醤油を手に一発勝負に出る。で、小皿にとって味見をさせてくれる。好みでなければそこで薄いとか濃いとか言ったらいいんだろうけど、文句の付けどころもないし、単純に「うん、良いダシでてますね」と素で言ってしまった。それからご飯投入、溶き卵流して固まりかけたところでIHスイッチオフ。薬味の葱投入。よそってくれるところまで店員さんがやってくれる。飲んだ後の締めにも最高。骨付きの身だけでこんなに良いダシが出て最後の汁一滴まで堪能。ぐへへ。
デザート: ゆずシャーベット。後味スッキリ。

飲み物

日本酒は高知の酒ばかり。土佐鶴、司牡丹、酔鯨。それぞれ複数種類のボトルがあるが、グラスなら1種類ずつ。土佐鶴の「天平印」があったのはさすがにビビった。焼酎もいろいろ。ビールはプレミアムモルツ。ソフトドリンクに「ごっくん馬路村」あり。ただし、メニューには「ゆずジュース(ごっくん馬路村)」と書いてある。どうせなら「ごっくん馬路村(ゆずジュース)」と書いて欲しかった。

まとめ

奮発した甲斐あった。司という料亭の名前は知っていたし、「料亭だから味はいいんだろうけどボリュームはそこそこかなあ」と思ったら味もボリュームも申し分無し。クエを食べたのは初めてじゃないけれど、こんなに美味い魚だったのか!と今さら気付いたのは、天然だからか偽装品ではない真クエだからか、はたまた店の空気か。



クエ鍋は初めだけ店員さんが順番に入れてくれるけど、その手つきに見入ってしまったからか複数人からその手元を見られて店員が緊張したのか、白葱を1切れ落とした。その葱はさっさとガラ入れに入れて、一通り具材を入れ終わったら「失礼しました」と葱一切れを小皿に入れて持ってきた。葱1つだけのために何と律儀なことか。なんか可愛らしかった。

ということで、身も心も大満足。食った食った。