君達の就職活動、僕らの採用活動

社会人も2年目となった。それなりに仕事も増えたし、苦労や困難、失敗の数々はあるけれど、それなりにやっている。毎日が面白いとはお世辞にも言えないし、そもそも毎日が面白い仕事は飽きるだろうから、今がちょうど良いくらいなのかもしれない。

3年ほど前、就職活動なるものをやった。大学院まで行くと、どうしても自分の研究分野に縛られ勝ちな傾向があり、たぶんに漏れず僕もはじめは自分の研究分野に直接関係のある業界で就職活動をするつもりでいた。が、なかなか進捗しない研究…本当にこんなものが意味があるのか…毎日こんな思いをしなければいけないのか…と思い悩んだ。そこで、気晴らしと専門じゃないけれど興味本位であるグループ企業の説明会に行き、それが縁のきっかけか今に至る。

はじめの1、2年は仕事のしかたを覚えるのが先だと言われた。知識はこれから何年も働いているうちに自然とついてくる。一応、業務基準というか、マニュアルみたいなものはあるにはあるんだが…マニュアル通りにやってりゃ良いもんじゃなく、イレギュラーな出来事は日常茶判事である。例えるなら機械で作ったコンビニのおにぎりみたいに全部同じ形のじゃなく、回らない寿司屋のカウンターみたいに、お客さんに合わせて希望や好みやこちらからの提案を織り交ぜてものを造らねばならない。ウチの会社だけでなく、この業界だけでもないだろう。働くってのはそういうことだ。たとえ「寿司の握り方」の教科書はあっても、「客のもてなし方」の教科書は無い。マニュアルを越えてはじめて接客のスタートラインがある、とはマクドナルドにアルバイトをしていたある人のことば。

さてこの度、若手技術職ということで採用活動に加わることになった。学生にとっては「そろそろ就活始めるかなあ」という気持ちだと思うが、企業はもう動き始めている。
もちろん僕は本業じゃなくて、仕事に差し支えない範囲で人事課に協力する。リクルーターってやつだ。そこで学生と触れ合うんだが、働き始めて学生を見るとどうしても目についてしまうことがある。予め断っておくけれど、以下は特定の誰かを言っているわけじゃなくて、かつての自分に思い当たるところがあるしこういう学生は嫌だなあ、というつもり。

根拠無く大企業志向

隠れた実力企業は山ほどある。どうしてもコンシューマ向け企業に目がいきがちだが、働いてみると「え、この会社ってこんなこともやってるのか? ウチの業界ではこっちの方が有名じゃないか」といったこともある。

ほんとに分かって研究してる?

大学の研究、とくに4年生の卒業研究や修士課程の研究は「研究の練習」みたいなもんだ。採用側が求めているのは「研究の成果」ではなく「困難が立ちはだかったときにどうやって解決したか」そのプロセス。トヨタ自動車だったと思うが、ある採用担当者のことばで「面接で3回突っ込めばボロが出る」という。研究について質問する。3回掘り下げると、その人は本当に分かって研究しているのか、分からずにやらされているのかが見抜けるという。

専門外の企業には目もくれない

「絶対」というコトバはそう簡単に使うものではないが、絶対に専門外の業界の説明会に行くべき。技術系だからこそ商社の話を聞くべき。技術屋がどんなに頑張って良いモノを作ったところで売れなければ企業は儲からないし、労働者は給料を手にすることができない。それに、商売のエキスパートである商社は総じてプレゼンテーションがうまい。

つまり、妙にプライドが高い

どういうつもりか知らないが、君にとっては初めての就職活動でも、採用側は何年も何十何百という学生を選んできた採用のプロだ。着飾ったまま何年も働くつもりなのか? そんなに着飾った厚化粧じゃ3ヶ月もせずボロが出るぞ。
ま、僕らリクルーターは「我が社アドバイザー」だから選ぶ権限はないんだけど。


「採用してやるから来いよ」で学生がついてくるのはごく一部だし、「面接うけてやってもいいぜ?」な気持ちの学生はこちらからお断り。口に出さずとも雰囲気で分かる。特に、営業と人事の「人を見る目」はそこら辺の学生が束になっても敵わない。
とは言ったものの、採用する側と就職する側は対等であるべきだ。採用というか、「同僚探し」と言ったほうが良い。再来年の春、一緒に働く同僚を探すのである。そのためには、誤解なきよう、こちらは会社の色んな側面を話すつもりだし、少しでも興味があれば本人の隠れた適性に結ばれるかもしれないと期待を込めているのだ。
採用活動を、サークルの勧誘活動と一緒にしてはいけない。と自分自身に言い聞かせ。